――四輪1664億円赤字が示す「EV移行期の現実」と今後の試練
ホンダが発表した2025年4〜12月期決算は、市場に強いインパクトを与えた。
純利益は前年同期比42%減の4654億円。これで2年連続の減益となり、特に注目されたのが四輪事業の1664億円の赤字だ。
一見すると、「EV投資の失敗」「経営判断ミス」とも映るが、実態はもう少し複雑だ。
今回の赤字は、ホンダ固有の問題というより、世界の自動車産業が直面している“移行期の痛み”が一気に表面化した結果といえる。
なぜ四輪事業は赤字に転落したのか
EV関連の「一過性費用」が利益を直撃
最大の要因は、北米を中心としたEV事業に関する一過性費用の計上だ。
一過性費用とは、簡単に言うと、「今回限りで発生する、いつもはかからない特別なコスト。」
- EV開発・生産体制の見直し
- 工場・設備投資の修正
- 採算が合わないEV案件の清算
EVは「売れてから投資する」ビジネスではなく、
売れる前に巨額の投資が必要になる。
ホンダはこの“回収前フェーズ”でコストが一気に表に出た。
為替(円高)と関税が同時に逆風
輸出比率の高いホンダにとって、前年以上の円高は利益を圧迫する。
さらに米国の関税政策や地政学リスクによる調達コスト上昇が重なった。
結果として、
- 売上は大きく崩れていない
- しかし利益だけが削られる
という構造になった。
四輪は「量の商売」だが販売台数が減少
自動車は典型的な固定費ビジネスだ。
- 台数が出れば利益が出る
- 台数が落ちると一気に赤字になる
25年4〜12月期の四輪販売は前年同期比9%減。
EV投資で固定費が増えた状態で販売が落ちたため、赤字が拡大した。
今回の赤字は「失敗」なのか
結論から言えば、完全な失敗ではない。
今回の赤字は、
- ガソリン車で稼ぎながら
- EV時代に移行する
というモデルが、最も苦しい局面に入ったことを示している。
世界の自動車メーカーの多くが、今まさに同じ谷を下っている。
今後ホンダに求められること
EVで「価格競争」に正面から入らない
中国勢や新興EVメーカーは、赤字覚悟で価格を下げられる。
株主企業であるホンダが、同じ戦い方をすれば体力を削るだけだ。
求められるのは、
- 最安値を狙わない
- 耐久性・品質・安全性で差別化する
EVでも「長く安心して使えるホンダ」という立ち位置を明確にすること。
四輪と二輪の役割を再定義する
これまでホンダは、
- 四輪:成長
- 二輪:高収益(ATM機能)
という構造だった。
しかしアジアでは二輪EV化が進み、二輪の収益性にも陰りが見え始めている。
四輪の赤字を二輪で埋め続けるモデルは、永遠には続かない。
→ 事業ごとの役割を見直す必要がある。
EVを「全部自前」でやらない判断
EVは、
- バッテリー
- ソフトウェア
- インフラ
まで含めると、完成車メーカー単独では重すぎる。
今後は、
- 提携
- 分業
- 外部リソース活用
を前提にした戦略が不可欠になる。
ホンダにとっての最大の障壁
最大の壁は、EV市場のルールそのものだ。
- 新興国:価格がすべて
- EV:差別化が難しい
- 投資回収まで時間がかかる
これは、「堅実経営」を強みにしてきたホンダほど不利な環境でもある。


コメント