― 過去最高益の本質を読み解く ―
アシックスの株価が急騰し、株式分割考慮後の上場来高値を更新した。2026年12月期の連結純利益は前期比11%増の1100億円と、過去最高を見込む。市場予想(1073億円)も上回り、投資家の評価は一段と高まった。
しかし重要なのは「好決算」そのものではない。市場が評価しているのは、アシックスの収益構造が明確に変わったことである。
売上増よりも重要な「利益率の改善」
今期見通しは以下の通り。
- 売上高:9500億円(+17%)
- 営業利益:1710億円(+20%)
- 営業利益率:約18%
スポーツ用品・アパレル業界で営業利益率18%は極めて高水準だ。
単に売上が伸びているのではなく、儲かる体質に変わっていることが本質である。
高価格帯シフトという戦略転換
かつてのアシックスは、機能性は高いが価格帯は中程度という印象が強かった。しかし近年は明確に戦略を転換している。
- 高価格帯商品への集中
- 値引き販売の抑制
- ブランド価値の再定義
「量を売る」から「単価を上げる」へ。
この戦略により粗利率が改善し、営業利益率が押し上げられた。
安売りをすれば売上は一時的に伸びる。しかしブランドは毀損し、長期的な利益率は低下する。アシックスはその誘惑に乗らなかった。
北米・欧州での再評価
近年、欧米市場でアシックスのランニングシューズが再評価されている。
背景には:
- 健康志向の拡大
- 市民マラソンの再活性化
- 機能重視志向の高まり
ナイキやアディダスが一時的に失速する中、アシックスは「本格派ランニングブランド」としてポジションを確立した。
特に足型・用途別に細分化された商品展開は、顧客満足度を高めている。
オニツカタイガーという“第二の柱”
株価上昇の背景で見逃せないのが、オニツカタイガーの存在だ。
- 欧州での人気拡大
- 訪日観光客需要
- 高価格帯戦略
- 直営店中心の販売モデル
オニツカは単なるスニーカーブランドではない。「日本発プレミアムファッション」として確立しつつある。
円安も追い風となり、観光地の店舗は常に外国人で賑わっている。
アシックスは、
- 機能特化ブランド(ASICS)
- ライフスタイルブランド(Onitsuka Tiger)
という二刀流体制を築いた。これが収益の安定性と拡張性を高めている。
在庫管理の改善と資本効率
アパレル業界の最大の課題は在庫だ。
アシックスは在庫回転率を改善し、ディスカウント販売を抑制。これにより利益率と資本効率(ROE)が向上している。
市場が評価しているのは、単発の好業績ではなく、
「高付加価値×高効率」の経営モデル
への転換である。
株価最高値の本当の意味
株価は未来を織り込む。
今回の上昇は、
- 最高益更新
- 市場予想超過
- 増配(28円→38円)
だけが理由ではない。
投資家はこう判断している。
アシックスは一時的な好況ではなく、構造的な収益企業へ進化した
だからこそ、株式分割考慮後の上場来高値を更新できたのである。


コメント