― エンジンの会社は電動化時代をどう戦うのか ―
マツダが屋台骨であるSUV「CX-5」を全面改良し、2026年春にも日本へ投入する。注目すべきは、これまで人気だった2.2リットルディーゼルエンジンを廃止し、ガソリンの簡易ハイブリッド車(MHEV)へ移行する点だ。
一見すると「ディーゼル撤退=電動化への転換」に見える。しかし、その本質はもっと戦略的だ。
これは単なる車種刷新ではなく、エンジンを強みとしてきた企業が、電動化時代にどう生き残るかという挑戦である。
なぜディーゼルをやめるのか
最大の理由は欧州の排ガス規制「ユーロ7」だ。
ディーゼルは燃費に優れる一方で、
・窒素酸化物(NOx)
・粒子状物質(PM)
の処理が難しい。
規制強化に対応するには、排ガス後処理装置の高度化や電動化の追加が必要となり、コストが急増する。価格競争が激しい中小型SUVでは採算が合わない可能性が高い。
つまり今回の決断は「技術的撤退」ではなく、資本効率を重視した選択と集中である。
マツダの本来の強みとは何か
マツダは規模で勝負するメーカーではない。トヨタのように台数で圧倒することはできない。
その代わりに磨いてきたのが次の3つだ。
燃焼技術
SKYACTIV-G、X、そして開発中のZ。
マツダは一貫して「燃焼効率の向上」に投資してきた。内燃機関の熱効率を高める技術は世界トップ水準だ。
走りの質
「人馬一体」という思想のもと、自然なハンドリングと加速フィールを追求してきた。
デザインと質感
魂動デザインにより、大衆車より上質、プレミアムより手の届く価格帯を確立した。
マツダは“合理性だけのメーカー”ではなく、感性価値を重視するブランドである。
なぜMHEVなのか
今回投入される簡易ハイブリッド(MHEV)は、モーターが主役ではない。
エンジン主体で走り、モーターが補助する方式だ。
多くのメーカーが「エンジンをできるだけ止める」方向に進む中、マツダはあえて逆を行く。
これは強がりではない。
・既存エンジン資産を活かせる
・開発投資を抑えられる
・ブランドの一貫性を保てる
という合理的な判断だ。
2027年以降の本命「HEV」
27年には本格的なハイブリッド(HEV)を投入予定だ。パラレル方式を採用し、エンジンの稼働領域を広く取る設計になる。
鍵を握るのが「SKYACTIV-Z」。
ラムダワン(理論空燃比)を維持しながらEGRで希薄燃焼を実現するという難度の高い技術だ。
狙いは明確だ。
・三元触媒を使える
・排ガス規制に適合
・熱効率を向上
エンジンを単なる過渡的技術にしないという意思表示でもある。
マツダの立ち位置
販売の最大市場は北米だが、技術戦略は欧州規制を前提にしている。
マツダは、「大衆車でもない」、「高級車でもない」
「準プレミアム」ポジションにいる。
実用性を重視しながらも、デザインや走りの質にこだわる層を狙う。
言い換えれば、
合理と感性の中間を狙うメーカーだ。
今後のマツダはどうなるか
シナリオは3つある。
EVが急速に主流化
→ エンジン技術の優位性が縮小
→ EVブランドへの転換が課題
ハイブリッド長期化
→ マツダの燃焼技術が武器になる
→ 独自ポジション確立
合成燃料・水素拡大
→ 内燃機関の再評価
→ 技術資産が生きる
最大のポイントは、
エンジンを残すことではなく、ブランド価値をどう未来へ移植するかだ。
たとえ将来がEV中心になっても、
・人馬一体の思想
・洗練されたデザイン
・運転する楽しさ
を電動車に移植できれば、生き残る可能性は高い。
まとめ
CX-5のディーゼル廃止は撤退ではない。
それは、
小規模メーカーが電動化時代に生き残るための再配置
である。
マツダは規模では勝てない。
だからこそ、思想で勝負する。
電動化が進む中で、「車らしさ」はどこまで価値を持ち続けるのか。
CX-5の刷新は、その問いへの一つの答えである。
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