最先端半導体の量産に不可欠な「EUV(極端紫外線)露光装置」の国内導入が相次いでいる。1台300億円を超えるこの装置が、2025年には日本で3台設置された。
世界で唯一EUVを製造するオランダASMLの決算では、日本向け売上が前年比4割増の約1900億円と急増。台湾や韓国を上回る伸び率となった。
かつて日本は先端ロジック半導体から撤退し、「EUV不毛の地」とも言われてきた。しかし今、国の支援のもとで再び最先端の舞台に立とうとしている。
では、この動きは日本に何をもたらすのか。
なぜEUVが重要なのか
半導体の性能は、どれだけ微細な回路を描けるかで決まる。
2ナノや1.4ナノといった最先端世代では、従来の露光技術では限界がある。波長13.5ナノメートルのEUVでなければ、実質的に量産は不可能だ。
つまりEUVは、
「最先端半導体への入場券」
である。
EUVが国内にあるということは、日本が最先端ロジック生産に参加できるという意味を持つ。
ノウハウの蓄積
EUVは単なる機械ではない。
真空制御、プラズマ光源、超精密位置制御、欠陥解析、歩留まり改善など、高度な技術の集合体だ。
ラピダスはIBMへ100人以上を派遣し、EUV運用技術を習得している。
こうした経験は国内に「暗黙知」として蓄積される。
これは材料、計測装置、次世代技術開発へと波及していく。
日本が強い部品・材料分野と、最先端プロセスが結びつくことで、
「点の強み」から「線の強み」へ
進化する可能性がある。
サプライチェーンの高度化
日本はレジストやウエハーなどで世界シェアが高い。
しかし国内に最先端工場がなければ、試作・改良・実装のフィードバックは海外依存になる。
EUV拠点があることで、
材料 → プロセス → 評価 → 改良
が国内で回る。
これは技術競争力を底上げする。
経済安全保障と外交カード
2022年時点で先端ロジックの69%が台湾に集中していた。
地政学リスクが高まる中、各国は生産拠点の分散を急いでいる。
日本が最先端生産能力を持つことは、
- 供給網の安定
- 米国との戦略的連携
- 地政学的プレゼンス向上
という意味を持つ。
半導体は単なる産業ではなく、国家インフラである。
では、復活は本物か?
ここが最大の論点だ。
EUVを導入しただけでは勝てない。
重要なのは、
- 量産歩留まりを安定させられるか
- グローバル顧客を獲得できるか
- 1ナノ世代まで投資を継続できるか
TSMCは圧倒的な顧客基盤と量産実績を持つ。
日本が同じ道を歩めるかは未知数だ。
今後期待されること
- 北海道・広島の半導体クラスター形成
- 研究開発投資の増加
- 高付加価値人材の集積
- 次世代EUV(High-NA)技術への参画
もしこれらが進めば、日本は「部品の国」から
「最先端プロセスを担う国」
へと変わる可能性がある。
結論
EUVの国内導入は、単なる設備投資ではない。
それは、
日本が再び最先端半導体のテーブルに戻ったという宣言
である。
ただし本当の勝負はこれからだ。
量産成功と顧客獲得まで到達して初めて、「復活」と言える。
EUVはゴールではない。
スタートラインである。
半導体の最先端を走る中国・アメリカの半導体戦略を解説した記事はこちら


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