はじめに
米国テック株の中で、好業績にもかかわらず株価が軟調なマイクロソフト。その背景として語られ始めたのが「SaaSの死」というキーワードだ。本記事では、この論点を起点に、AI時代におけるMicrosoft・Amazon・Googleの勝ち筋の違い、そして市場が本当に求めているものを整理する。
そもそもAI産業について全く知らないという方はまずはこちらAI産業の構造を一気に理解する
「SaaSの死」とは何か
SaaS(Software as a Service)は、
- 人が使う
- 人数(席数)に応じて課金する
というモデルで成長してきた。
しかしAIの進化により、
- 人が操作しない
- AIが自律的に業務を回す
世界が見え始めたことで、人数課金モデルが崩れるのではないかという懸念が市場に広がった。これが「SaaSの死」と呼ばれている。
業務SaaSとMicrosoft 365は同列なのか
結論から言えば、同列ではない。
一般的な業務SaaS(Salesforce、Adobeなど)は、特定業務に特化した「アプリ」である。一方、Microsoft 365(Word、Excel、Teamsなど)は、
- 業務プロセス
- ファイル形式
- 承認・会議・共有
といった仕事の前提条件そのものとして企業に深く埋め込まれている。
そのため、AIの登場によって即座に不要になる存在ではない。
それでもMicrosoft株が売られる理由
株式市場が見ているのは「今の利益」ではなく、5年後・10年後の稼ぎ方だ。
Microsoftの場合、
- 業績は好調
- Azure(クラウド)も成長
にもかかわらず、
- Copilot(AI機能)の利用拡大が限定的
- AIの主役がChatGPTやGeminiに見える
- OpenAIへの依存構造
といった理由から、
「AI時代でも、Microsoftはどうやって稼ぎ続けるのか?」
という問いに、明確な答えが示せていないと市場は判断している。
市場が求める「AIが働く証拠」
AIブームの中で、市場が最も警戒しているのは「物語先行」だ。
そのため投資家は、
- AIが処理した業務量
- 人件費削減率
- 1社あたり売上の増加
- 導入前後の生産性差
といった数字で確認できる成果を求めている。
「AIを使っている」ではなく、
「AIが利益を生んでいる」証拠が必要なのだ。
AI時代、3社の勝ち筋の違い
AIで勝つ方法は大きく3つに分かれる。
Amazon(AWS)|AIを“使わせて”儲ける
AmazonはAWSを通じて、
- 計算力
- データ保存
- AI実行基盤
を使った分だけ課金する。
AIの成功・失敗に関係なく、
AIを使う限りAmazonは儲かる
という、最も分かりやすい収益モデルを持つ。
Google|AIで“行動を変えて”儲ける
Googleは検索と広告を握っている。
AI(Gemini)が賢くなるほど、
- 検索精度が向上
- 広告の最適化が進む
結果として、
AIの進化=広告収益の拡大
につながる構造を持つ。
Microsoft|AIを“働かせて”儲ける
Microsoftが狙うのは、
- 会議
- 資料作成
- 営業・管理業務
といった人の仕事そのものをAIに任せる世界だ。
成功すればインパクトは最大だが、
- 実装が難しい
- 成果が見えにくい
という理由で、評価には時間がかかっている。
なぜAmazonは「AIの土台」になれたのか
AWSは「AIのため」に作られたわけではない。
Amazonがネット通販を成長させるために、
- 止まらない
- 拡張できる
- 低コスト
IT基盤を自社利用のために作り込んだ結果、それを外販したものがAWSだった。
この
- 長年の運用実績
- 圧倒的な経験値
が、他社には真似できない参入障壁になっている。
おわりに
「SaaSの死」とは、ソフトウェアが不要になるという話ではない。
それは、
「人が操作すること」を前提にした稼ぎ方が揺らいでいる
という警告だ。
AI時代の評価を決めるのは、
- どれだけAIを導入したか
ではなく、 - AIがどれだけ働き、利益を生んだか
Microsoft・Amazon・Googleの競争は、
その答えを誰が最初に数字で示せるかという段階に入っている。


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